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第8回 蜂蜜エッセイ応募作品

ハチとの遭遇

渡邉啓子

 

 一度も刺されたことはないが、私は幼い頃からハチが大の苦手だ。あの黒色と黄色の独特な縞模様を見るだけで虫唾が走る。小学校低学年のとき、公園で宿題の写生をしていたら、付き添っていた母が暇を持て余してクマバチを帽子で捕まえようとして逆に刺された様子を目の前で見てしまったことも、ハチへの恐怖心が一層増したように思う。ハチは花から花へと飛びまわり、花粉や密を集める。世間一般的には、その姿は美しいといえるのかもしれないが、ハチの姿を見ると、咄嗟に逃げ出したくなるのだ。
 春先から初夏にかけては、どうしてもハチと遭遇することが多くなる。だから、特に子どもが小さいうちは、洗濯物を取り込む際にはハチが紛れ込んでいないか十分に注意しなければならない。というのも、今までに数回、ハチが洗濯物の中に紛れ込んでいるのに気づかずに家の中に取り込んでしまったことがあるからだ。一人暮らしの時は、何度窓から逃がそうとしても家の奥まで入り込んでしまい、仕方なく狭い部屋に追い込んで数日そのままにし、父親に来てもらって追い出したことがあった。
 娘が保育園児のときには、もっと酷いことがあった。取り込んだばかりの洗濯物の娘の靴下の中にハチが入り込んでいたのだ。私は妙な音が聞こえるなと思いながらも、靴下をいつものやり方でコンパクトに折り畳んでタンスの中にしまってしまった。幸い、次の日の朝に気付いてすぐに窓から逃がしてあげたが、一歩間違えれば大変危険なことだったと思う。もし、気づかずに娘がその靴下を履いていたら、ハチに刺されてしまっていたかもしれないのだ。
 しかし、その経験から、ハチに対する私の感情は少しずつ変わってきたように思う。ハチは働きバチと言われながらも、仕事をサボって昼寝をしていたのかなと想像したりした。そう考えると、ハチも人間もよく似ているのかもしれない。ハチも私たちと同じように、生きるために必死に働き、時にはサボる。彼らが懸命に働いた上に出来上がる蜂蜜はとても美味しいし、体にも良いので、私たち人間にとって大切な存在といえる。もし、ハチがいなくなったら、私たちの生活は大きく変わってしまうだろう。
 もちろん、今でもハチは好きになれないが、恐怖心は多少和らいだ。ハチは私たちにとって敵ではなく、友だと思うようにしている。このように、ハチとの出来事は、自然との関わりを考える大きなきっかけになった。

 

(完)

 

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